outofscope:2025-05-14
一般意志と全体意思
一般意志と全体意思は、どちらも社会における人々の意志に関する概念ですが、フランスの思想家ジャン=ジャック・ルソーによって明確に区別されました。
一般意志 (仏: volonté générale)
- 共同の利益: 一般意志は、個々人の私的な利益の総和ではなく、社会全体の共通の利益を目指す意志です。
- 公共性: それは、社会の成員が、個人的な利害を超えて、公共の利益を考慮し、理性に基づいて形成する意志と考えられます。
- 正当性: ルソーは、一般意志が主権の源泉であり、正当な法の基礎であると考えました。なぜなら、一般意志は社会全体の幸福を追求するからです。
- 形成過程: 一般意志は、人々が自由に意見を交換し、議論し、熟慮することを通じて形成されると考えられています。
- 誤りの可能性: ルソー自身も、一般意志は常に正しいとは限らないと述べています。人々が欺かれたり、十分に情報を得ていなかったりする場合には、公共の利益に反する決定を下す可能性もあります。
全体意思 (仏: volonté de tous)
- 私的利益の総和: 一方、全体意思は、個々人の持つ私的な利益や願望の単純な総和に過ぎません。
- 公共性の欠如: 全体意思は、共通の利益を目指すものではなく、単にその時点における個々人の欲望の集まりであるため、公共性や道徳的な正当性は保証されません。
- 多数決との関連: 全体意思は、しばしば多数決の結果と混同されますが、ルソーは、多数決が必ずしも一般意志を反映するとは限らないと考えました。なぜなら、多数派が自己の私的利益のみを追求する可能性もあるからです。
両者の違いの例え
例えば、ある地域で公園を作るかどうかを議論する場合を考えてみましょう。
- 全体意思: 個々の住民が「自分の家の近くに公園が欲しい」「公園を作るために税金を払いたくない」といった個人的な希望を表明し、それらを単純に集計したものが全体意思に近いと言えます。
- 一般意志: 住民たちが、公園が地域全体の環境改善、子供たちの遊び場の確保、住民の交流促進など、共通の利益にどのように貢献するかを議論し、その結果として公園建設を支持する意志が形成された場合、それが一般意志に近いと言えます。
重要なポイント
ルソーにとって、重要なのは単に人々の意見を集めること(全体意思)ではなく、人々が公共の利益を真剣に考慮し、理性的な議論を通じて共通の目標を見出すこと(一般意志)でした。一般意志は、社会契約の基礎であり、自由で平等な社会を実現するための重要な概念とされました。
現代においても、一般意志と全体意思の区別は、民主主義のあり方を考える上で重要な視点を提供しています。単なる人気取りや多数決ではなく、公共の利益に基づいた政策決定の重要性を示唆していると言えるでしょう。
outofscope/2025-05-14.txt · 最終更新: by atnmn